tadashiriの日記(仮)

つらそうにしている、人

『ベイビー・メイク 私たちのしあわせ計画』(2012)

 なんかGyaOで時間を無駄にしたい気がして観た映画の話しますね。
 どんな話かっていうと、「そろそろ夫婦の間に子供が欲しかったにもかかわらず、最近種無しになったことが判明した男が、昔精子バンクに売った自分の精子を取り戻そうと奮闘する」という話ですね。

 で、まああらすじだけ見るとマジで何で観たんだろうと思う(GyaOの掘り出し映画特集が悪い)し、ざっくりとした感想としても何で観たんだろうって感じでした。よくよく考えたらそもそも血のつながった子供欲しいと思ったことがないから、共感できるわけなかった。それに、そうじゃなくてもこの映画の結末というか、お話に対してかなり釈然としない思いがあるんですよ。ていうかね、別に期待してなかったからそんなに怒るでもないけど、結構ダメだよこの映画!!

 で、まず、そろそろ子ども欲しいねなんて言いあって、それから9か月やりまくったけどガキができやしねえってところから物語は始まるんだけど、ここのテンポはまあまあいいんですよ。
 毎晩のセックスにうんざりしてきたのをうっかり漏らした主人公が、キレてる嫁をなだめながら「君とのセックスは素晴らしい、例えるなら……」と言ったところで、主人公が友達と飲んでるシーンに切り替わり「フルタイムの仕事かよ!!!」って叫ぶっていうところとか、まあ無難だと思うし”フルタイムの仕事”っていう比喩自体は別に面白くもないんだけど、わりと押さえてる演出だなーと思ったりしたんですよ。

 GyaOの他のめっちゃぶさいくな映画群と比べれば、サラッとお話を流せてる(ように見える)っていうか。

 その前のシーンで結婚記念日にそろそろ子ども欲しいねって言いあうシーンでレストランの中で”アナル”を連呼したり、料理が高いだのとゴネる主人公にそもそもイラつくんだけどね。余談だけどこの映画の下ネタ会話、字幕が駄洒落で翻訳されるなどの工夫が見られないせいで、うわっとしかならないんですよね。
 で、まあその後、検査して種無しが判明するんだけど、検査が全然うまくいかないのね、しかも別にこの検査がうまくいかなくて難儀する展開、ある一点を除いてほとんどオナニー系の下ネタを出すためだけにある展開という感じで、どうでもいいんですよね。別にそんなことまでうまくいかない必要はねえだろうと。で、まあこのオナニー系の下ネタなんだけど、検査のためにオナニーしなきゃいけないからってビデオ付けたら前に病院のオナニー部屋を使ってた人が残した獣姦AVが大音量で流れるとか、そういうの、別に!!って感じ。


 あと話飛んで、なんやかんやで精子バンクに忍び込んで精子を盗むしかないってことになる(ここの展開も単に主人公の頭がどうかしてるようにしか見えないんだけど)のね。で、この辺りから「友人の知り合いのインド人の強盗の専門家(自称)」が出てきて、このキャラの読めなさはちょっと面白いんだけど、納得いかない度もこの辺でどんどん上がってくるわけですよ。
 で、精子盗むチームとバカ夫を食いとめるチームの話が同時進行して、ここでとにかくケイパーものとしての楽しさとかが全然ない(ナンセンスコメディとして振り切ってるとかでも別にない)んだけど、まあなんやかんやで夫は逮捕されて奉仕作業をさせられるけどガキはできたよってオチになるのね。

 で、盗んだ精子から生まれたのが三つ子なんだけど、三つ子ちゃんレースとかいって、主人公と嫁と友達らがホームパーティーで博打打ってるとこで終わるんですよ。
 で、なんかハッピーエンドっぽいけど、しかもなんか「バカでボンクラでもパートナーを愛していればオッケー」みたいな感じの話になっているけど、なんならそれってオー・ヘンリーの『賢者の贈り物』ナイズされてるような気すらするんだけど、全く納得いかないわけですよ。

。まず嫁は、というか嫁に限らずこの世界が主人公たちに甘すぎるというか、この主人公の突発的な行動のせいで引っ越し資金が吹き飛ぶし、主人公があるキャラクターに嘘をついたばっかりに、一人死んでるか腎臓抜かれるかしてるんですよ。そのキャラクターはその嘘にもっと怒っていいし。そもそもこのくだりが物語的に必然性がない。単にブラックユーモアやるためだけに、作品の中の平均的なモラルを大きく逸脱しちゃうと観る側がその後ずっと笑いにくくなると思うんですよね。

 あと、主人公と一緒に精子盗みに行く友達が精子の容器ぶちまけてえらいことになるんだけど、お前がぶちまけた全部に買い手がついているかもしれないの、わりとシャレになってなくないですか。(もちろんその友達が賠償金に悩んだりするようなエピローグはない)あとお前ら夫婦もっとちゃんと話し合え(ミもフタもない)。でも少なくとも最後の方主人公が空き巣を決意するシーンは完全におかしくて、それこそ『賢者の贈り物』的なすれ違い行動にはなってなくて、単にちゃんと嫁の誤解を解く努力をしろよってことにしかならないでしょ。

 で、ラストが「三つ子ちゃんレース」な訳じゃん。なんかこの映画って”子供は親のQOLを上げるために作るもんだし、そのためにいろんな人に迷惑をかけても、夫婦が幸せならオッケー”って価値観の映画に見えるんだよね。それってこういう主人公や、作り手が一番親なっちゃいけないんじゃないのって感じがしましたね。